こんにちは、ロジウムの中川です。
「システムを導入したいけれど、どうしたら良いのかわからない」というご相談をよくいただきます。
一口にシステム導入といっても簡単なことではありません。ITについても知識も必要ですし予算や人員の手配も必要です。何から着手したら良いのかさっぱり見当が付かない、なんてこともあるかもしれません。
そこで今回はNPO(に限りません)がシステムの導入の必要性に迫られた場合、どうしたら良いのかということについて書いていきます。
そこでとにかく団体として最低限するべきことを手順ごとにまとめました。
目的を明確にする
何のためにシステムを導入するのか、システムを導入して達成したいことは何なのかを明確にしましょう。
「そんなことは分かり切っている!」と思われるかもしれませんが、私の経験上、尋ねてみると意外とぼんやりしていたり、人によって考えていることが少しづつ違ったりします。
そこで次の2点について明確に答えられるように考えてみてください。
- なぜシステムを導入する必要があるのか
- (目的が複数ある場合)優先順位
どうでしょうか?スラスラと言うことができますか?それならば文句なしです。
できれば目的を明文化して、チーム全員で共有して共通認識を持てるようにしましょう。後になって「なぜこの機能が必要なんだっけ?」と迷子にならないようにしましょう。そうすることで今後チームが皆同じ方向を向いて一丸となって進みやすくなります。
進めていくうちにシステムを導入すること自体が目的となってしまうことが少なからずあります。システム導入は手段にすぎません。あくまで目的のためにシステムを導入するということを忘れないでください。初心忘るべからず。
誰がやるのか を決める
つまり自団体内でできることなのか、そうではないのかを見極める必要があります。
システムを導入する場合、システムやネットワークなどITやプロジェクトマネジメントに関する様々な知識が必要になります。もし団体内にそういった知識を持った人・チーム(いわゆる情シス)がいて、その人達ができるのであればそれに越したことはありません。
仮に団体内に専門家・チームがいたとしても、
- 今回導入しようとしているシステムについての知識・経験があるのか
- その人(達)のリソース(時間・予算)があるのか
- システム導入後の運用も踏まえて検討しているか
といったことを見極めなければなりません。
大抵のNPOでは自団体だけでシステムを導入するのは難しいのではないでしょうか。
自団体で対応できないとなるとできる人・会社に依頼することになります。つまりお金を払って外注業者(ベンダーと呼ぶ)にお願いするのです。以降ではベンダーに依頼する前提で説明します。
最近は非営利セクター向けに割引などのサポートをしてくれる会社が増えてきています。ベンダーの選定の仕方については後半で説明します。
ベンダーに依頼するために
「ベンダーにお金さえ払えば、あとはうまい具合にやってくれるだろう」という考えは甘いと言わざるを得ません。そういったスタンスで挑み、クライアントとベンダー間の意思疎通がしっかり取れず、システムの導入に失敗した例を数多く見たことがあります。
こちらでも紹介していますが、これはよくある失敗です。
確かにベンダーはシステムのプロですが、彼らに丸投げせずに「一緒に良いシステムを作り上げる」という心構えが重要です。丸投げダメ、ゼッタイ。
では団体としてお金を払う以外に何をすれば良いのでしょうか。
ベンダーはシステムのことは知っていますが、団体のことは知りません。(初見のベンダーならば特に)
そこで団体のこと、導入したいシステムのこと、業務のことをベンダーに伝える必要があります。
RFP(Request For Proposal:提案依頼書)を作成し、ベンダーに依頼することもあります。しかし整ったRFPを作成するとなると、これまたそれなりに知識・リソースが必要です。
ですので最低限以下のことをベンダーに伝える準備をしておきましょう。
- 目的(最初に明確にしましたよね)
- 納期(いつまでにシステムの導入が完了すれば良いのか、いつからシステムを使いたいのか)
- 予算
相見積もりを取る場合予算を明かさないこともありますが、NPOの場合は予算を明確に伝えた方が良いと思います。
NPOに必要なベンダーとは団体のことを一緒に考え、一緒に悩んでくれるパートナーです。安さだけを売りにしているベンダーだとそういった関係になりにくいのです。予算もしっかり伝え、その予算内でできることを考えてくれるベンダーを選んだ方が良いでしょう。
どんなシステムが欲しいのか、ということは必ずしも伝える必要はありません。目的を伝えることでベンダーは必要な事柄をヒアリングし、先入観なく最適なシステムを検討してくれます。もしそうではなく、「どのようなシステムが欲しいのか行ってくれないと作れない」というベンダーがいたら、つまり提案能力のない証拠であり避けた方が良いでしょう。
他にも伝えるべきことはたくさんありますが、上記を伝える準備ができれば第一歩と言えるでしょう。
ベンダーの探し方
ベンダーを選定するためにはどのようなベンダーがあるのかを知らなければなりません。
そこでまずは既に知っている、付き合いのあるベンダーに尋ねてみるのが近道です。それが難しい場合は知り合いのベンダーやITに詳しい人に尋ねてみるのが良いでしょう。
紹介や直接コンタクトを取った場合、何等か条件が合わなかった場合に断りづらいと感じるかもしれません。しかし気にする必要はありません。気を使って依頼することになり、結果的に最適なシステムを導入できない場合の影響は小さくないはずです。
次に周りにITやシステムに詳しい人がいない、いるが紹介してもらえなかったという場合です。
そういう場合は中間支援団体に尋ねてみるのが良いでしょう。彼らはそういった依頼、質問を多く受けており、また様々なベンダーとの繋がりを持っているため相談する価値があります。
ただし何かトラブルが発生した場合、必ずしも彼らが助けてくれるとは限りませんので注意が必要です。
それでも見つからない場合はインターネットで検索することになるでしょう。
その場合はせいぜいインターネット上にある会社概要や実績などを参考にするしかありません。なかなか安心材料を見つけるのはむずかしいでしょう。
そのため面倒でもできるだけ相見積もりを取ることをお勧めします。複数社を比較検討することで、どのような観点で検討すれば良いのかが少しずつ見えてきます。
ベンダーを選定する
候補となるベンダーが挙がったとしても、イチかバチかでお願いするのはリスクが大きすぎます。できるだけ相互に情報交換をして、本当にパートナーとしてやっていけそうかどうかを見極める必要があります。現代の人なら初めて会った人と一生添い遂げる決心をするなんて、到底無理ですよね。
まずは「3. ベンダーに依頼するために」で検討した内容を伝えましょう。先方も商売ですから「できない」「難しい」などのネガティブなことはあまり言わないかもしれません。ですがあくまで営業トークであると理解して、もっと踏み込んで質問してみるとよいです。
例えば次のような質問をして、安心・納得できる回答をもらえるベンダーが良いでしょう。
- 同じ業界・業種の経験はありますか?どのくらいありますか?
- 同じようなシステムを経験されたとき、どのような点が苦労しましたか?
- (Webなど成果を見ることができる場合)他団体の成果物を見せてください
- 今後どのような進め方をするのですか?
- 団体側の作業はどのようなことがありますか?
こうして相手のことをもっとよく知って理解してください。
直感的に感じたことも意外と大事です。お願いするとなるとこれからパートナーとしてのお付き合いになるため、相手のことが「何となく気に入らない」となると、コミュニケーションが取りづらくなってしまいます。恋愛だってどれだけ相手のステータスが高くても、直感的に受け入れられない人とは長続きしないですよね。
逆に団体もベンダーに対し誠意をもって接することが重要です。発注する側だからといって上からものを言うような態度ではベンダー側のモチベーションが上がりません。相手も人です。そういった態度はそのままシステム、プロジェクトの品質に跳ね返ってきてしまいます
またよくあるのが自団体の理念の押しつけです。「こんなに素晴らしい活動をしているのだから、ベンダーも協力してくれて当然!」と考えるのは間違いです。団体がどれだけ素晴らしい理念で活動していたとしても、ベンダーは営利を目的として組織である以上、営利を得られないことはしません。
CSRの一環としてNPOを支援しているベンダーは多数あります。ですがそれはベンダーの善意でしていることであり、それを当然と考えるとうまくいかないでしょう。活動の理念に共感した人・企業にお願いしたいのであればプロボノやボランティアに依頼すべきです。
以上がこれまで多くの失敗をしてきた経験から得た結論です。非常に大まかに書きましたが、上記のことに気を付ければ大きな失敗をせずにシステムを導入できるでしょう。