こんにちわ、中川です。
今日は巷で言われているマクロの属人化について考えてみたいと思います。
ExcelやAccessなどのマクロはうまく使えば非常に強力で、使っている企業も多くあると思います。
一方でマクロを使ったシステムを構築することで、業務が属人化してしまう問題も昔から言われている大きな問題です。
属人化すると何が問題なのか?
簡単に言うとある業務が特定の人しか知識・スキルを持っておらず業務がブラックボックスになってしまうということです。
そのためその特定の人が異動や退職した暁には他の人が業務を引き継いで遂行できなくなってしまいます。
ここで実際にあった属人化のお話をしたいと思います。
本当にあった(属人化の)怖い話
とあるチームでは何日もかけてチームみんなで経営層に提出するためのレポートを作成することが毎月の大きな仕事の1つでした。
そんなとき、とあるExcel職人がVBAマクロを駆使してレポーティングのためのツールを作成したのです。
このレポーティングのツールは様々趣向が凝らしてあり、素敵なグラフや表がちりばめられたこれまで以上に立派なレポートがボタン1つで出力されます。
周りの人たちもそれまで何日もかかって作成していたレポートが一瞬で出力できると知って、重宝して使うようになりました。
その後、レポートの内容を変更したり、レポートの種類が増えたりしましたがExcel職人が即座に対応してくれました。
そうしてレポーティングのツールが当たり前に使われて数年が経ったある日、Excel職人も年を取り退職することになりました。
周りの人はExcel職人のこれまでの仕事っぷりを讃えつつ退職を祝いました。
Excel職人も惜しまれながらも満足げに職場を去るのでした。
そして数日後、上司からレポートに少し変更を加えてほしいといつものように依頼がありました。
それまではExcel職人がいつも知らぬ間に修正していたのですが、もうExcel職人はいません。
そのことに気づいたチームの人達は愕然としました。
しかしすぐに気を取り直し、何とかして手作業で作成しようと考えたのです。
レポーティングのツールを作る前は自分達で手作業で作っていたため、何とかなるだろうと思ったのです。
ところがもうかなり前の話で、いざやってみると作業内容を覚えている人はほとんどいません。
あの時と比べると人も入れ替わっています。
しかも手作業で作成していた頃のレポートと今のレポートはほとんど別物と言えるくらいに変わってしまっていました。
そしてレポート提出期限の日時を迎え・・・
属人かは本当に”悪”なのか?
この例でみると業務が属人化されることは悪いことのように見えます。
ですが本当に属人化することは悪いことなのでしょうか?
属人化の反対は標準化と言えるでしょう。
属人化を排除し業務を標準化すれば誰でもある程度の品質で業務を遂行できるようになります。
ですが一方で標準化するための工数、つまりマニュアルやドキュメントの作成などの時間が必要です。
また業務内容が変わった場合はそのドキュメント類をメンテナンスしなくてはなりません。
また人それぞれ得意なやり方、やりやすいやり方があっても標準的な手法に揃えなくてはなりません。
そのため個々人の生産性を伸ばすというよりも、全体で一定程度の品質を担保するための方法が標準化と言えます。
昨今はシステム開発においては(ほかの業界でも同様かもしれませんが)環境の変化がすさまじい速度で起こります。
そのため一定程度の品質を担保しつつ慎重に進めるというよりは、「拙速は巧遅に勝る」の通り業務遂行の速度が重視されるようになっています。
そうなると必ずしも業務を標準化することが善とは言えないのではないでしょうか。
まとめると、次のようになります。
- 属人化:個人の生産性を伸ばしやすい、業務がブラックボックス化してしまう
- 標準化:個人の生産性を伸ばしにくい、全体の品質を一定程度担保できるようになる
ということで結論はありきたりですが、属人化・標準化のメリット・デメリットを理解したうえでうまく業務に適応する、ということになろうかと思います。
属人化についてはもっと色々考える余地がありそうなので、後日別の角度から考えてみたいと思います。